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電車をデザインする仕事 水戸岡鋭治の流儀 日本能率協会マネジメントセンター刊 [鉄道本]

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水戸岡デザイン。この言葉が囁かれるようになって久しい。それは、現代の鉄道にとって、ある種のムーブメントだ。


その、ざっくりとしたイメージは、外装としては、細い線と細い文字、渋目ながら艶のある色合いを用い、鉄道車両としては見慣れない印象に仕上げている。内装としては、木をふんだんに用い、素材を意識させる構成という感じだろうか。


しかし、この本を読むと、それは表面的なイメージに過ぎないことが分かる。
というのも、氏は本書の中で氏のデザインは、パブリックデザインであると述べ、"多くの人が集まって生活する公共空間を俯瞰する"ことで、デザインを施していると言う。


私が、本書から読み解いた俯瞰することとは、鉄道車両をデザインするだけだなく、デザインをきっかけに住民と一体となって地域を盛り上げたり、通勤のちょっとした乗車時間であっても、心地よい最高のデザインを提供するということを考えるためには、まずは状況を俯瞰しなさいということだ。
また、その結果、クライアントや、乗客の"期待値"の高いものを生み出し、全体的な関わる人々のモチベーションを上げることが大事だと読み解いた。


例えば、内装に風土が育てた素材を多用することで、"居心地の良い空間を演出しています。それは、地域活性化の目的があるからです。"ということに繋がると述べる。
つまり、風土の素材、その土地の技で加工することで、地域住民のモチベーションを向上したり、観光客に、地域性を意識させたりと、そういうことを、狙ってデザインを考えているということである。


そして、現在の"量産方式のメーカー主導型"の車両作りでは、プラスチックと鉄の多用により、商品としての個性がない。これを特注品としての個性を持たせるためには、"デザイナー主導型の車両製造"に切り替えべきと主張する。また、製造段階にデザイナーが深く関与することでコスト管理ができ、コストも抑えられるとのことだ。


氏の活動は、鉄道の地域での役割を、地域住民、鉄道会社が一体となって見直すという事を、デザインを通じてファシリテートしていると感じる。その意味で、公共デザイナーなのかも知れない。


いちファンとしては、氏が各地に蒔いた種が、今後、どう花開くのか楽しみである。


電車をデザインする仕事  「ななつ星in九州」のデザイナー水戸岡鋭治の流儀

電車をデザインする仕事 「ななつ星in九州」のデザイナー水戸岡鋭治の流儀

  • 作者: 水戸岡 鋭治
  • 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
  • 発売日: 2013/11/23
  • メディア: 単行本


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