SSブログ

昭和の鉄道風景 南正時著 実業之日本社 [鉄道本]

46047EBD-0C64-43E2-85D0-42BD3359F63E.jpeg

今回紹介する本は、ケイブンシヤの鉄道大百科シリーズでお馴染みの、南正時さんの著書だ。本の出版されたのは2008年。はじめにでは、「0系が新幹線が引退するいま、(中略)私の個人史に足場を置きながら、写真と共に語ってみようと思う。」と前置きされている。


事実、0系は出版年の2008年に引退した訳だが、この本では新幹線開業を起点にして、平成の初期までの、著者の鉄道にまつわる思い出を著者の歩みとともに綴っている。


内容は、国鉄から地方私鉄までを簡潔な短文で綴られており2、3時間もあれば読み切れてしまう。
そして、昭和40、50年代のことが多く語られているが、個人的には583系や食堂車の思い出、日中線、鹿児島交通や、瀬戸電の描写が面白かった。


さらに、”581系「有明」では、主張中のある学習誌の編集長と、指定席で偶然隣り合わせとなった。”
とあり、ここから大百科シリーズが生まれた言う。何か、581系の独特な車内の雰囲気と合わせて、
会話の様子が頭に浮かんでくるとは、言い過ぎであろうか。


いずれも、数ページながら心情を交えた端的な描写が創造を掻き立てる。
この「後は読者の皆さんよろしく」感が、百科シリーズにも通じるものだろうか?
タイトル通り、昭和の鉄道の風景をダイジェストで振り帰るには良書である。

0系新幹線から始まる 昭和の鉄道風景 (じっぴコンパクト)

0系新幹線から始まる 昭和の鉄道風景 (じっぴコンパクト)

  • 作者: 南 正時
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2008/10/31
  • メディア: 単行本


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

父・宮脇俊三への旅 宮脇灯子著 角川文庫 [鉄道本]

C7D622DF-40A0-4EF6-A444-3F6DD7A7ED5F.jpeg

この本は、鉄道の旅を中心にした紀行作家、宮脇俊三氏のご令嬢、灯子氏が、宮脇氏の逝去の三年後に書かれたものだ。内容は、氏にまつわる話を集めたエッセイ集である。


本書の中で、私が一番興味があったことは、
鉄道紀行文を文学にまで高めたその流麗なる文章は、どのように生まれてきたのかという点だ。


当本によれば、それは、深夜酒とともに生み出された様である。全ての作品がそうなのかは分からないが、”書斎でちびちびやりなが書いていた”とのこと。
しかし、六十を超えたあたりから、”筆力がおち、酒の力を借りて書くようになった”そして、齢とともにアルコールへの依存が進み、1999年、72歳ごろに 休筆宣言をしている。
例え、才能があろうとも文章を書くということの大変さが分かるエピソードだ。


その他に本書では人間味のある、ちょっと拘り屋のお父さんとしての氏の姿が描かれている。
例えば、子供達から贈られた人形を鞄に入れて旅していたことや、野球好きが奏して、強かった池田高校の校歌を、録音し父娘で暗記したことなど、作品からは窺い知れない、ユーモラスな一面も多く取り上げられている。
何かそこに、氏の文章に時々顔を出す、とぼけた人間味や、几帳面さを感じてしまうのだ。


この様な種類の本は、好き嫌いあるとは思うが、氏の作品の新たな味わい方の添えにいかがだろう。





父・宮脇俊三への旅 (角川文庫)

父・宮脇俊三への旅 (角川文庫)

  • 作者: 宮脇 灯子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: 文庫


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

15歳の機関助手 川端新二著 交通新聞社新書 [鉄道本]

340EB9F2-97E4-4F2A-A889-04C299962127.jpeg

今夏の国際模型コンベンションにて、川端新二さんの講演を聴講した。
“シリーズ乗務員が語る蒸機時代4”という演目で、川端新二氏、宇田賢吉氏、大山正氏という構成でそれぞれの経験、思いを語って下さった。

私の川端さんとの出会いは、川端さんの著作、”ある機関士の回想”という本を、図書館にて偶然見つけたことから始まる。

この本は、川端さんの経験を詳しく書いたもので、当時、鉄道に関する書籍を読み始めたばかりの私は、乗務員視点の精緻な文章に感銘を受けた。そこには、写真だけだは分からない、時間軸を持った記録がある。

今回取り上げる本は、川端さんが、”ある機関士の〜”とは異なる視点で書かれたものだ。
それは、戦中という現代からは想像がつきにくい環境での乗務記録だ。

先の講演でも触れていらっしゃったが、米軍機の機関車への掃射、空襲による被害と職員殉職、戦後の石炭の質の悪化など、機関車を動かすだけでも一苦労なのに、さらに困難な状況に直面する。そういった体験が淡々と語られていく。

そんな状況を体験してもなお、氏はなお、”あの激動の時代、蒸気機関車に乗って懸命に働いたことは、誇りであり心の大きな財産”と言う。

それは、あの時代を生き抜いた人にしか言えない事かも知れないが、文字によって追想できることは、私たちにとって幸運なことだと思う。



15歳の機関助士―戦火をくぐり抜けた汽車と少年 (交通新聞社新書)

15歳の機関助士―戦火をくぐり抜けた汽車と少年 (交通新聞社新書)

  • 作者: 川端 新二
  • 出版社/メーカー: 交通新聞社
  • 発売日: 2012/12/01
  • メディア: 単行本



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

私鉄のターミナル物語 藤本均著 たちばな出版 [鉄道本]

IMG_6959.JPG


本書は、私鉄のターミナルの変遷を史実に基づいて紹介したものだ。それは、例えば、”国鉄など先行鉄道との関係”のように、事実情報がテーマごとに書かれているものであって、何故そうなったかといあ点には触れていない。それが、物足りなさを感じさせる。


しかし、最終章の”私鉄ターミナルのゆくえ”では、著者は、洞察のある指摘をしている。”ハード的にはスルー化、ソフト的には多様化が進む”というものだ。


ハード的なスルー化とは、鉄道輸送の量から質への変化、すなわち、直通乗り入れの増加のことであり、ターミナルは、本来の性格を失い、スルーされる存在になるということ。そして、それは、かつての郊外電車と市内電車の直結した形であること。


ソフト的な多様化とは、本書の出版された20005年当時は、隆盛を極めたパスネットを取り上げ、このまま進むと、通勤の行きと帰りで異なる路線を選択できるという多様性に対するニーズが生まれるのではという論である。


ハード的なスルー化は、現在着々と進んでおり、東京近郊のその代表格は、東急であろう。本書でも、著者の弁を代表する形で取り上げられている。すなわち、市内電車の玉川線から地下化工事を経て郊外線になり、その後、半蔵門線に次いで東武に乗り入れスルー化を達成した。
ソフト的な多様化の面では、パスネットに次いでSuica、PASMOの共通利用サービス、そして全国レベルで交通系ICカードの共通利用に発展した。


今では、いずれも著者の論の通りとなった。
さて今後はどうか。
より正確に安全に快適にをモットーに高架化、自動化が進みつつ、
通勤人口の減少による減益、その先に経営統合、合併劇...だろうか?


私鉄ターミナルの物語

私鉄ターミナルの物語

  • 作者: 藤本 均
  • 出版社/メーカー: たちばな出版
  • 発売日: 2005/06
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

立腹帖―内田百閒集成〈2〉内田百閒著 ちくま文庫刊 [鉄道本]

download.jpg

ちくま文庫の内田百閒集成シリーズの中で、鉄道にまつわる随筆をまとめたのが本書である。百閒先生と言えば、阿房列車であるが、収録させれている作品の調子は、阿房列車のそれと変わらない。

しかし、阿房列車にはない可笑しみや哀らしさがある。それは本書にある随筆が、より人々や光景に焦点を当てているからではないだろうか?

個人的に一番面白っかた作品は、時は変革である。タイトルには、それなりの含蓄があるが、内容は、百閒先生が東京駅一日名誉駅長を勤めた時の話である。その際、発車させるはずの大好きな”はと”に乗り込んでしまった話は、あまりにも有名であるが、本作には、予め周到に用意していたことや、童心のような心情が、おもしろおかしく書かれている。

“しかし駅長がその職場を放棄し、臨機に職権を拡張して、勝手な乗車勤務をすると云う事は、穏やかでないから、秘密にする。”

また、直前に知らされた、国鉄職員の方が、群衆に向かって”名誉駅長は職場を放擲して行くと云うのです。皆さんどう思いますか?”
と尋ねると賛成、賛成と声が上がる場面など、改めて百閒先生は人徳に支えられているのだなと感じさせられる。さすが、公に認められた乗り鉄である。

因みに、タイトルの”時は変革す”とは、当時の国鉄総裁が戦争近辺では、鉄道はサービスすべきでないと言っていたのに、戦後、サービスが絶対と言い出した事に対して、人の世の変転を感じたと云う事だ。
それだけなら、ああ、そうかもねで済んでしまいそうだか、それに止まらないのが百閒先生の根性だ。名誉駅長の訓示にて痛烈にその矛盾を指摘した。職員が鉄道精神を逸脱して、サービスに走り、その枝葉末節に拘泥し、勤めて以って足りるとするのならば、鉄路の錆と化すであろうと。
もちろん、百閒先生は、サービスは必要なものとの立場からの発言である。

名誉駅長の経緯が面白く、その話ばかりになってしまったが、いずれの収録作品からも時代の空気を感じることができ、鉄道本好きには堪らない。間違えなくお勧めの本だ。


立腹帖―内田百けん集成〈2〉 (ちくま文庫)

立腹帖―内田百けん集成〈2〉 (ちくま文庫)

  • 作者: 内田 百けん
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2002/11/01
  • メディア: 文庫



nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

鉄道地図の謎から歴史を読む方法 野村正樹著 KAWADE夢新書 [鉄道本]

securedownload.jpeg


この本のタイトルは鉄道地図だが、本の内容は、特に地形的な地図に言及しているわけではない。
むしろ、路線図から日本の鉄道の歴史を総覧した内容だ。
その中でも、戦前、戦中、戦後における政治と鉄道の関係について、短文ながら緻密に鉄道の歴史が
語られる。そうした意味で、歴史をまとめ読みするに適した一冊だ。


以前、小ブログで取り上げた、”やさしい鉄道法規”や、”井上勝: 職掌は唯クロカネの道作に候”が、歴史の中である分野や人物を深く
掘り下げた内容であるのに対し、この本は、それを横通しで繋ぐ役割があるように思う。

例えば、2002年に、鉄道事業法により鉄道の開廃業が届け出制になったが、鉄道法規から見ると
事業者と担当省の負担軽減であるが、本書では、小泉政権化の規制緩和の流れの中で施行された
ものであり、結果として、”地元の合意がなくても、運輸大臣に「退出届」を出せば良くなった”と
本制度を、廃線を増やした”陰の主役”と皮肉る。


事実、”需給調整規制廃止前後における鉄軌道の廃止状況の変化に関する分析”
によれば、2001年の時点で一気に廃止路線が増えている。
本書の端々で、こうした仮説めいた発言が見られるが、著者は単にファンの立場から感情的に
発言しているのではなく、綿密に裏付けを取った上でのことであることが分かる。


おわりにの章で著者は、「日本の近現代を振り返る際の新しい手掛りとしての鉄道」を知るきっかけ
になって欲しいと記している。大げさではあるが、私の個人としては、本書から鉄道の廃止を嘆く
だけでなく、その地域に鉄道とともに確かに存在した文化を振り返ることも大切だと再認識させられた。それだけで一読の価値があったと思う。



鉄道地図の謎から歴史を読む方法 (KAWADE夢新書)

鉄道地図の謎から歴史を読む方法 (KAWADE夢新書)

  • 作者: 野村 正樹
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2008/09/23
  • メディア: 新書


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

やさしい鉄道法規 和久田康雄著 交通研究協会 [鉄道本]

IMG_5494.JPG

この本を読むと、鉄道ファンとして、一度は聞いたことの多くは、法律にも基づいた決まりごとが多いことが分かる。


例えば、運賃と料金がある。運賃は、認可が必要なのは、運賃と特別急行料金、急行料金、座席指定料金であり、その他のものについては、届出制、貨物については自由と決められるそうだ。認可が必要な項目は独占から利用者を守るために設定されている。
という訳で、寝台列車の場合、乗車券、特急券、寝台料金と券が三種類に別れているのだろう。


また、軌道についてほ、軌道法とい法律がある。この中には、いわゆる路面電車の他、モノレールや新交通システムも含まれる。
これらは、その敷設は道路上に行うなど都市計画レベルでの検討が必要であることから、軌道法の管轄に建設省も絡んでいることに起因するようだ。


もっとも現在では、運輸省、建設省もなく国土交通省になっているので、こういった経緯は、過去の歴史となっているがそれを知るのもまた面白い。


そして、鉄道法規で繰り返されることが、鉄道は公益的なものであると言うことだ。
その多くは利用者の立場になって立法されている。


最近、方々で鉄道を私有物と見間違っているファンの方が見受けられるが、鉄道とは、元来、公共物なのだと改めて言いたい。そんなことを感じざる得ない本であった。


ちなみに、本書に掲載された情報は、刊行年の1998年時点のものです。




やさしい鉄道の法規―JRと私鉄の実例 (交通ブックス)

やさしい鉄道の法規―JRと私鉄の実例 (交通ブックス)

  • 作者: 和久田 康雄
  • 出版社/メーカー: 交通研究協会
  • 発売日: 1999/04/01
  • メディア: 単行本


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

ケービンの跡を歩く 金城功著 おきなわ文庫 [鉄道本]

FullSizeRender.jpg

最近、個人的に軽便鉄道が気になっている。
そんな中、色々調べているうちに沖縄に軽便鉄道があったことを知り、本書を手にした。


本書は題名通り、沖縄の県営鉄道跡を歩くという内容だ。島の人々は、同鉄道を親しみを込めてケービンと呼んでいた。


本書の特筆すべき点は、風景描写に留まらず、道すがら出会った人々に積極的に声お掛けながら歩み進めて行く点だ。当時のケービンの姿は、そうした人たちの当時の記憶から、イキイキと蘇ってくる。


特に本書が執筆された、1997年は、戦争で路線が荒廃する前の姿を知っている人たちが、まだ市井に多くあり、線路の線形や日々の姿など貴重な情報に巡り合う確率も高かった様である。


これについて著者は、あとがきで"歩きながら人々に声をかけた。戦前から住んでおられる地元の人か、鉄道のことを知っている方かなと、その人の年齢などを頭で計算しながら声をかけた。"と述べている。


人々の話は本書の中でも素のままで取り上げられており、とても興味深い。
例えば、坂道で失速しそうな時は、機関士が燃え切らない石炭を掻き出し、次から次へと投炭をしていたこと、灰が火種となりたまに火災が起きていたことなど、数値的な記録資料だけでは知ることが難しい話題が掲載されている。


特に機関車の能力が存分に出せなかった点について、別本、図説 沖縄の鉄道 では、"沖縄の水は硬水で機関車の管にカルシウムが付着しやすい"、石炭は"八重山は悪質でカスが多い"と記載されており、運転の苦労を運営側からも知ることができる。因みに、この本は、沖縄の鉄道を史実や資料に沿って、紹介しており読み応えがある。またの機会に紹介したい。


2015年には、県営鉄道設立100周年事業として与那原駅舎軽便資料館が開館した他、ゆいレール展示館にも軽便関連の展示があると言う。


脈々と熱い活動が続いている沖縄県営鉄道。今後も目が離せない状況だと思う。


図説・沖縄の鉄道

図説・沖縄の鉄道

  • 作者: 加田 芳英
  • 出版社/メーカー: ボーダーインク
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 単行本


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか―日本文学の中の鉄道をめぐる8つの謎 小池滋著 早川書房 [鉄道本]

FullSizeRender.jpg

この本では、日本文学に登場する鉄道に関わる記述を取り上げ、考証を行うというスタイルで書かれている。


著者は英文学の研究者だが、この本では研究者的視点に想像力を交え、割りとくだけた文調で書かれている。それが、氏の仮説を程よい距離感で受け入れらる空気を作っている。


肝心の内容だが、先ずは、本のタイトルにもなっている"坊ちゃん"の松山を離れた、その後についての論考だ。


かいつまんで言うと、漱石先生の坊ちゃんでは、"その後ある人の周旋で街鉄の技手になった。月給は二十五円で、家賃は六円だ。"
と記載されているが、著者は、なぜ技手になったのか?を作家サイド事情から探っている。
それは、漱石先生が一番利用した街鉄、それを、当時、"文明開化の先端を行く市内電車"は、"物理学校出の天才の就職先"としてふさわしいものとして選んだというのが著者の論考である。


このような具合で8編の作品を取り上げている。


その中で私が気になった文章は、著者をして通勤電車小説の元祖と言わしめる田山花袋の少女病に対する論考、"電車は東京市の交通をどのように一変ささたか"と、永井荷風のぼく東綺譚に対する論考、"どうして玉ノ井駅は二つもあったのか"だ。


前者は、田山花袋の他作品で使われた"郊外の人"という言葉から、作家の時代を先行く先見性に注目し、その視点の延長に登場間もない通勤電車を題材にした少女病があるという。


後者は、昔あった京成と東武の玉ノ井について、荷風の趣向や地域性を交え、その歴史と作品に用いられるメタファーを、さりげなく解説してある。


何れにしても、本作では、作家の視点が大事にされており、そこからの仮説立てが面白い。
鉄道好きであれば、文学に登場する鉄道に、それはどうかな?といちいちツッコミを入れた経験は、一度ならずあるだろう。この本は、そんなツッコミをわざわざ調べてくれた痒いところに手が届いた本なのかもしれない。



「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか―日本文学の中の鉄道をめぐる8つの謎

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか―日本文学の中の鉄道をめぐる8つの謎

  • 作者: 小池 滋
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 単行本


タグ:小池滋 文学
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

汽車旅12ヶ月 宮脇俊三著 潮出版社 [鉄道本]

IMG_4889.JPG


この本が書かれた当時、著者は、国鉄線完乗、最長片道切符の旅制覇し、"つまり、私の遊びの対象が失われた"状態であった。


しかし、本の執筆にあたり各線の乗り直しを行うことで、"実に数多くの要因によって、それぞれの線区の印象がちがうこと"に、改めて気がついた。


そして、"四季折り折り七色に装いをかえる多彩な国土を恐れぬ、不遜な感懐であった"
と自らを諭し、四季折々の鉄道旅の風情を取り上げたのがこの本だ。


昭和54年に発刊した当本の内容は、現在からすると、当然のごとく古い。しかし、昭和生まれの私からすれば、著者の観察眼と文章のリズムから当時の様子が生き生きと伝わってくる。また、ページの端々に話題に関する路線図が掲載されていて、現代との比較に事欠かない。当時は、清水港線など盲腸線がまだまだ健在で、羨ましくも、楽しくも読める。


文書表現は、ちょっと諧謔的な表現もあるが、これは百間先生からの鉄道紀行文の伝統と思えば良いのではなかろうか。


そんな中、個人的に文中の著者の言葉に目から鱗ともいうべきものがあった。


"移動のための手段である限り交通機関は「文明」でしかない。それに対し、手段を目的に置き換えることによって汽車や船が「文化」へと昇華してくる"


鉄道趣味は文化である。私たちは文化の担い手である。おこがましくもそう考えれば、散財し時間も浪費をして家人に目をつけられようとも、少しは救われるのではないだろうか。


汽車旅12カ月 (河出文庫)

汽車旅12カ月 (河出文庫)

  • 作者: 宮脇 俊三
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2010/01/06
  • メディア: 文庫


nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。